漆喰(しっくい)を塗装する際の注意点
鈴木良太【外壁塗装110番 代表】
幼少の頃、二世帯住宅に住んでいた祖母が悪徳業者に騙されたのをきっかけに外壁塗装110番を立ち上げました。累計20,000件を超えるお客様からの相談や、一級塗装技能士の資格を持つプロの職人に話を聞き、より正確な情報を掲載できるよう心掛けています。
宇野清隆【株式会社カルテット 代表】
職人暦20年、他の塗装店にも技術などを教えるプロ中のプロ。日本ペイント、アステック、その他の大手塗料メーカーから全国1位の実績と表彰。審査の厳しいホームプロでは、毎年顧客満足優良店に選ばれる。
児玉圭司【株式会社児玉塗装 代表】
名古屋市で地元のお客様に愛されて50年。児玉塗装の3代目。16歳の若さで塗装業入りし、趣味も特技も塗装。圧倒的な知識と技術でお客様からの満足度も高い。
漆喰を塗装する場合は、アレスシックイなどの専用塗料を使うことをオススメします。万が一、通常の塗料で塗装をすると直ぐに剥がれる可能性が高いので注意が必要です。
漆喰は建材の1つで、水酸化カルシウム・炭酸カルシウムが主成分でできています。日本では古くから、城郭・寺社・民家・土蔵などに使われていました。民家では、瓦や石材の接着や目地の充填、外壁や室内に施工されます。
「漆喰を塗装する」言うと、漆喰そのものを塗るのか?今ある漆喰の上から塗料を塗るのか?が分かりにくいので、このページでは以下のように定義します。
漆喰に塗装する=今ある漆喰に塗装屋が塗料を塗ること
漆喰を施工する=モルタルなどの下地の上に左官屋が漆喰自体を塗ること
漆喰の種類
漆喰と言っても様々な種類があり、それぞれ特徴が異なります。
本漆喰
本漆喰は、消石灰に海藻で作られた糊と麻繊維を混ぜ合わせたものです。一般的に漆喰の聞いてイメージするのが、この本漆喰かと思います。
古くからある漆喰を使用する建築物のほとんどは本漆喰が用いられており、真っ白な見た目が特徴です。
西洋漆喰
西洋漆喰とは、消石灰に骨材や防水材、大理石、セルロースファイバーなどを混合して作られる漆喰です。プラスターとも呼ばれています。
耐久性が非常に高く、白く輝いた仕上がりになるのが特徴的です。西洋の教会やお城などに多く採用されています。
土佐漆喰
土佐漆喰は、消石灰に水と熟成させたワラを混ぜ合わせて作る漆喰で、他の種類とは違い、糊を使わないのが特徴です。
施工直後はワラの色が影響してクリーム色ですが、紫外線が当たると徐々に白色に変わっていき、やがて黄色っぽい仕上がりになります。
琉球漆喰
琉球漆喰は、生石灰とワラ、水を混ぜ合わせて作られたもので、土佐漆喰と同じく糊を使用していない漆喰です。
耐久性や断熱性に優れており、沖縄でよく用いられています。また、色味も土佐漆喰と似ていますが、最終的に濃い黄色や薄い茶色に変化します。
漆喰のメリット・デメリット
漆喰の特徴やメリットは以下の通りです。漆喰自体は素晴らしいものです。塗装屋などでも漆喰が好きな職人もいます。
・防水性があり、日本家屋に多く使われている土壁を風雨から守れる
・調湿機能があるため、湿度が高く蒸し暑い日本の夏によく適している
・年月をかけて二酸化炭素を吸収して固くなる性質があるので、古い漆喰でも丈夫である
・不燃素材なので防火性があり、火事に弱かった木材を基本とする日本家屋の外壁保護材として使われている
ただ、デメリットもあります。次のようなことが理由で、外壁材として漆喰を施工することは少なくなってきました。
・外壁材の主流がサイディングに移行した
・しっかりと施工できる左官屋が少なくなった
・施工単価が高く、施工期間も長い
漆喰を施工した外壁そのものの耐久性
漆喰は、年月をかけて二酸化炭素を吸収して固くなる性質があるので、古くなっても強度が落ちることがありません。そのため、漆喰自体の耐久年数は100年以上とも言われています。
ただし、しっかりとメンテナンスした場合の話で、100年間メンテナンスしなくていいと言うわけではありません。
漆喰を施工する場合の単価
漆喰自体を施工する際の単価は、材料費、人件費を合わせて6,000~10,000円です。使う材料や下地の状態によっても異なりますので、あくまで目安です。
漆喰の劣化症状
漆喰の劣化症状として挙げられるのは、次のようなケースです。
汚れ・カビ
漆喰は基本的に白いため、汚れが付着したり、カビが発生すると非常に目立ってしまいます。そのため、汚れを見つけたら、こまめにお手入れすることが大切です。
お手入れ方法については、次項の「漆喰の補修・メンテナンス方法」でご紹介します。
ひび割れ・傷
外部からの衝撃や地震、車の振動による揺れによってひび割れ・傷がついてしまう場合があります。
ひび割れや傷を放置していると、そこから雨水が内部に浸入し、雨漏りに発展する可能性があります。そのため、破損箇所を発見した時は、状況が悪化する前に早めに補修しておくことが重要です。
漆喰の剥がれ・浮き
漆喰の剥がれ・浮きは、ひび割れ・傷を放置したことによる劣化の進行や、湿度や温度の影響などが原因で発生します。
剥がれ・浮きを放っておくと雨漏りの発生だけでなく、漆喰による保護機能の低下や下地の腐食にも繋がるため、早急な対処が必要となります。
また、ここまで劣化が進むと、漆喰自体を作り直さなければならないので、メンテナンス費用も高くなってしまいます。
漆喰の補修・メンテナンス方法
漆喰のメンテナンス方法は、次の通りです。自分で出来るお手入れ方法もありますので、綺麗な状態を保つ為にも、ぜひチェックしてみてください。
汚れを落とす
漆喰の外壁に付着した汚れの落とし方、汚れの程度によって変わってきます。
簡単な汚れであれば、消しゴムや水洗いでも十分に落ちます。頑固な汚れの場合は、キッチンハイターなどの塩素系漂白剤を水で薄めて、布でふき取れば綺麗になります。
漆喰はアルカリ性なので、酸性の洗剤は絶対に使わないでください。
ひび割れ・傷の補修
ひび割れや傷がみられる際は、部分的に上から漆喰を重ね塗りする方法で補修します。
劣化が広範囲にわたっていたり、ひび割れが深い場合などは、漆喰の重ね塗りだけでは対応しきれないため、漆喰自体を新たに施工し直す必要があります。
漆喰の再施工
ひび割れの状態が酷い場合や剥がれ・浮きが発生している時は、漆喰の再施工が必要です。一旦、既存の漆喰を剥がし、下地を調整してから新たに漆喰を施工します。
劣化が進行するほど大がかりな工事が必要となり、費用が高額になったり、工事期間が長くなってしまいます。そのため、定期的に点検を行い、早めにメンテナンスすることが大切です。
漆喰に塗装する場合は注意が必要!?
漆喰に普通の塗料を塗ると、1~2年で剥がれてしまいますので注意が必要です。
漆喰に塗装する際は、以下の塗料がよく使われます。
■関西ペイントのアレスシックイ
http://www.kansai.co.jp/shikkui/
■日本ペイントのケンエース
http://www.nipponpaint.co.jp/biz1/building/products/prd_18.html
本物の漆喰ではなく、漆喰風の外壁用塗料もある
「漆喰を施工したいけど、高いお金を払いたくない」「漆喰を施工したいけど工期が長い」という方の為に、漆喰風にできる塗料もあります。漆喰風の外壁用塗料であれば、塗装屋でも塗料のように塗ることが可能です。
ただし、あくまで漆喰風なので、本物の漆喰のような耐久年数にはならない点だけ注意が必要です。
漆喰風の外壁用塗料には、次のような商品があります。
■アイカ工業 株式会社のジョリパッドシリーズ
http://www.aica.co.jp/products/fill-w/jolypate/jp-100/
■菊水化学工業のグラナダシリーズ
http://www.kikusui-chem.co.jp/products/detail/
漆喰に関する動画
漆喰を施工
漆喰の補修
漆喰に塗装
まとめ
漆喰は外壁や瓦屋根など様々な部分に使用される建材で、耐久性が高く、デザイン性もあるのが特徴です。
ただ、漆喰を施工できる職人が減っていたり、施工費用が高く、工期も長いため、外壁としてはあまり採用されなくなっています。
また、もし漆喰を塗装する際は、専用の塗料を使用することが重要です。普通の塗料を塗ってしまうと、早期の剥がれに繋がるので注意しましょう。