鈴木良太【外壁塗装110番 代表】
幼少の頃、二世帯住宅に住んでいた祖母が悪徳業者に騙されたのをきっかけに外壁塗装110番を立ち上げました。累計20,000件を超えるお客様からの相談や、一級塗装技能士の資格を持つプロの職人に話を聞き、より正確な情報を掲載できるよう心掛けています。
宇野清隆【株式会社カルテット 代表】
職人暦20年、他の塗装店にも技術などを教えるプロ中のプロ。日本ペイント、アステック、その他の大手塗料メーカーから全国1位の実績と表彰。審査の厳しいホームプロでは、毎年顧客満足優良店に選ばれる。
児玉圭司【株式会社児玉塗装 代表】
名古屋市で地元のお客様に愛されて50年。児玉塗装の3代目。16歳の若さで塗装業入りし、趣味も特技も塗装。圧倒的な知識と技術でお客様からの満足度も高い。
外壁や屋根塗装の塗り回数は何回塗りか?
基本的に外壁や屋根に塗る回数は、下塗り、中塗り、上塗りの合計3回です。ですが、これは塗料メーカーが発表している塗料の性能を引き出すための最低限の塗装回数です。メーカーの規定を守りしっかり塗装をすることで以下のような効果が得られます。
・塗料の期待耐久年数を発揮できる
・塗膜が剥がれにくくなる
・防カビ、防水などの塗料が持つ効果を十分に発揮できる
ただし、下地の劣化状況、仕上げの種類、使用する塗料によって4回以上塗る場合もあります。ここでは4回を越えて塗る場合について説明していきます。
下塗り・中塗り・上塗りの目的
外壁・屋根塗装の塗り回数は、「下塗り→中塗り→上塗り」の3回塗りが基本です。中塗り・上塗りは「上塗り2回」と表現される場合もありますが、作業内容は同じものになります。
下塗り・中塗り・上塗りを行う目的は、以下の通りです。
下塗りの目的
下塗りを行う目的は、主に以下の3点です。
・中塗り、上塗り塗料の密着性を高めるため
・塗装表面を整えるため
・下地の吸い込みを抑えるため
下塗りには接着剤のような役割があり、中塗り・上塗りの密着力を高める効果があります。さらに、塗装面の凹凸を無くして表面を平らに整える働きも持っています。
また、劣化した外壁材や屋根材には小さな穴や傷がついており、そのままの状態で塗装をするとスポンジのように塗料を吸い込んでしまうため、最初に下塗り塗料を吸い込ませておき、上から塗る中塗り・上塗りが吸い込まれるのを防ぎます。
中塗り・上塗りの目的
中塗り・上塗りは、基本的に同じ塗料を使用します。
2回塗ることでムラのない仕上がりになり、さらに塗膜に一定の厚みをつけることによって、保護機能や耐久性など塗料本来の性能を十分に発揮できるようになります。
塗り回数を守らないと起こる不具合
塗料には塗り回数が決められており、塗り回数を守らないと次のような不具合が発生してしまいます。
・施工後、すぐに塗装が剥がれる
・塗装面に凹凸やムラが生じる
・塗料本来の性能が発揮できずに、期待耐久年数より早く劣化する
どれだけ高性能な塗料を使用しても、塗り回数を守らなければ十分な性能を発揮することはできません。また、ただ塗り回数を多くすればいいというものでもありませんので、メーカーが定めた通りの回数を塗装することが重要です。
4回以上塗るケース
下地の状態が悪いとき
下地の劣化が激しい場合は、下塗りの回数が増える場合があります。
それは下塗り塗装の目的で説明した「下地の吸い込みを抑えるため」という作業に、下塗りの回数が増える理由があります。
劣化が激しい下地を塗装する場合、下塗りを1回しても塗料の吸い込みが収まらないことがあります。吸い込みが収まらずに中・上塗り塗料を塗装をすると、下地(外壁)に塗料が染み込み、塗料の色がぼやけるなどの不具合が生じ、均一な仕上がりにはなりません。
そのため、1回目の下塗りで下地の吸い込みが激しい場合は、下塗り塗装を2回もしくは3回行います。
3回以上塗る仕上げ工法のとき
3回以上塗る仕上げ工法とは、以下のような工法です。
複層弾性仕上げ
弾性塗料の伸縮性能が長期的に期待できる工法です。下塗り1回、中塗り2回、上塗り2回で合計5回塗ります。
サイディング2色塗分け仕上げ
サイディングのへこみ部分とタイル模様の部分を別々の色で塗ることで、タイル調に仕上げることができる工法です。
最初は、通常通り下塗り1回、中塗り1回、上塗り1回で目地部分の色を全体的に塗装します。その後、タイル模様部分のみに、別の色で中塗り1回、上塗り1回塗装します。そのため、合計5回塗装します。
目地張り付け仕上げ
コンクリートやモルタルなどの外壁に目地を作成し、タイル調に仕上げる工法です。塗装回数は、5工程以上になります。
タイル調に仕上げたい箇所に目地棒を張り付け、その上から塗料を塗り重ねます。その後、目地棒を取り外せば、その部分と塗装した部分で厚みに差ができ、タイル調の見た目に仕上げることができます。
メーカーの規定で3回以上塗る必要がある塗料を使うとき
使用する塗料のカタログに、仕様として3工程以上の塗装が記載されている場合があります。
そのため、上記の理由以外で塗装の回数が多く提案されている場合は、塗料名を検索し、塗料メーカーのホームページからカタログを見てみましょう。
程数が3工程以上ある塗料例
塗料名 | 塗料メーカー |
GAINA | 株式会社日進産業 |
ルミステージ | AGCコーテック |
ハナコレクション | 日本ペイント |
ダイヤモンドコート | 日本ペイント |
デュフロン4FⅡフレッシュ | 日本ペイント |
ジキトーン御影 | 日本ペイント |
その他、塗る回数が変化するケース
クリアー塗装をする場合
クリアー塗装とは、名前の通り透明な塗料を使用する方法です。下塗り塗料には色がついているので、クリアー塗装では下塗り塗料を使用できません。
クリアー塗装をする場合は、下塗りを行わず合計で2回塗りで仕上げます。
日当たりが良い面へ塗装する場合
塗膜は、紫外線を受けると劣化が早まります。そのため、日当たりが良い面へ塗装する場合は、上塗りの回数を多くする場合があります。
訪販が提案する5回塗りには注意
訪問販売の見積もりでは、よく5回塗りを提案してくる場合があります。上記で説明したように、場合によっては5回塗りもあります。但し、5回塗りの合計単価が1万円を超える場合は注意が必要です。
また、訪問業者から3回塗り以上の塗装を勧められた場合は、どの塗料を多く塗るのか、またその理由も業者に確認しましょう。
塗料は、塗れば塗るほど耐久年数が上がったりはしません。そのため、塗料の仕様書に記載されている基準を守り、建物の状態にあった塗装をすることが重要です。
塗り回数が守られているか確認する方法
職人の知識や経験が不足していたり、手抜き工事をして不当に利益を出そうとする悪徳業者の場合、塗り回数を守らずに塗装をする可能性があります。
しかし、お客様自身で作業内容を全て見ていられるわけではないので、しっかりと塗り回数が守られているか確かめるのは難しいです。
塗り回数が守られているか確認したい場合は、以下の点をチェックしてみるといいでしょう。
見積書を確認する
見積書に工程として、下塗り塗装・中塗り塗装・上塗り塗装それぞれの記載と、使用する塗料名などが書かれているか確認しましょう。
もし下塗り塗装の記載がない場合は、要注意です。下塗りが不要な塗料もありますが、基本的には必ず下塗りは行わなければならないため、下塗りに関して書かれていない場合は手抜き工事をされる可能性があります。
工程表を確認する
工事の工程表と日々の進捗状況を照らし合わせて予定通りの期間で塗装されているかを確認することにより、塗り回数が守られているかを見極める際の判断材料となります。
工程表には、その日に行う作業内容や必要日数が書かれており、事前に業者にお願いすれば提出してもらえます。
もし工程表の書き方が下塗り塗装、上塗り塗装などではなく「塗装工事」等のざっくりとした記載のみの場合は、塗り回数とそれぞれにかかる日数を聞いてみるようにしましょう。
作業内容を写真に残してもらう
工事期間中は建物が養生シートや足場で覆われており、それにより作業内容も把握しにくくなるため、作業日ごとに進捗状況や作業の様子がわかる写真を撮ってもらうと安心です。
特に、下塗り・中塗りに関しては工事終了後に見ることができない部分なので、しっかりと写真に残してもらうようにしましょう。
中塗りと上塗りの色を変えてもらう
中塗りと上塗りは同じ塗料を使うため、何回目の塗装なのかを判断するのが難しいです。そのような場合に、確実に塗り回数を守ってもらえるよう、中塗りと上塗りの色を変えて塗装する方法があります。
ただ、塗り回数を判断する手段としてはわかりやすいですが、中塗りと上塗りの色を変える際は次のような注意点も挙げられます。
・同じ製品だとしても、色を変えることで塗料本来の性能を十分に発揮できない可能性がる
・劣化して塗装が剥がれてきた時に、中塗りの色が表面に出てきて見た目が悪くなる
・異なる塗料を用意しなければならないので、塗料代が高くなる
塗り回数が守られるか不安に感じる方も多いと思いますが、色を変える方法はデメリットもあるため、業者と相談しながら決めることが大切です。
まとめ
外壁・屋根塗装の塗り回数は、下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りが基本となります。
ただ、工法や塗料の種類、劣化具合によっては2回またが4回以上塗るケースもあるので、お客様自身でも状況をしっかりと把握しておくことが大切です。
メーカーの定める塗り回数を守らないと、早期の剥がれや耐久性の低下など様々な不具合をもたらしてしまうため、見積書やその日の作業内容を確認して、きちんと回数が守られているかチェックするようにしましょう。