軒天を塗装や交換するときの価格相場
鈴木良太【編集者・サイト管理人】
幼少の頃、二世帯住宅に住んでいた祖母が悪徳業者に騙されたのをきっかけに外壁塗装110番を立ち上げました。累計20,000件を超えるお客様からの相談や、一級塗装技能士の資格を持つプロの職人に話を聞き、より正確な情報を掲載できるよう心掛けています。
宇野清隆【株式会社カルテット代表】
職人暦20年、他の塗装店にも技術などを教えるプロ中のプロ。日本ペイント、アステック、その他の大手塗料メーカーから全国1位の実績と表彰。審査の厳しいホームプロでは、毎年顧客満足優良店に選ばれる。
児玉圭司【株式会社児玉塗装代表】
名古屋市で地元のお客様に愛されて50年。児玉塗装の3代目。16歳の若さで塗装業入りし、趣味も特技も塗装。圧倒的な知識と技術でお客様からの満足度も高い。
軒天の補修は大きく分けて塗装、張り替え、カバー工法の3種類あります。
塗装にかかる費用は、30坪の住宅の場合で3万円~5万円前後になります。張り替えは使用する材質により異なりますが18万円~23万円程度です。カバー工法は建材の種類にもよりますが、12万円~17万円程度です。
塗装と張替えやカバー工法を比べた場合、塗装の方がかなり安いので、劣化が激しい場合を除いて塗装で対応するのが一般的です。
軒天とは
軒天とは外壁より外側に出ている屋根の天井部分を指し、軒天井、軒裏、上げ裏、軒裏天井とも呼ばれています。
火災時に屋根裏の延焼を防ぐのが大きな役割で、下地材を隠す美観の役割もあります。
軒天の材質
軒天の建材は主に、ケイカル板(けい酸カルシウム板)、カラーベニヤ、スパンドレルが使用されています。
ケイカル板
ケイカル板は、水酸化カルシウムと砂を主原料を板状に成形した不燃ボードです。耐火性、耐水性、耐久性が非常に高い点が特徴なので、現在最も使用されている建材です。
有孔板
有孔板は、表面に小さな穴が開いた板です。穴の開いた板は屋根裏を換気し結露を防ぐことができます。また、防火に効果を発揮する有孔板もあります。
カラーベニヤ
カラーベニヤは、表面に塗装や突板の貼り付けを行った木製の板です。施工しやすい点や価格面では優れており、30年以上前に主流であった建材です。
しかし耐火性、耐水性、耐久性がケイカル板に比べ低く、特に耐火性の低さが原因で、現在の一般住宅では使用されることが少なくなってきています。
スパンドレル
スパンドレルは、金属化粧板の総称で、アルミや鋼板、ガルバリウムと亜鉛メッキなどから作られています。
特徴は、高級感があり意匠性が高い点です。ですが、価格が高く、金属なので経年劣化で腐食が起こるといったデメリットもあります。
軒天の補修方法
軒天の補修方法は3種類あります。
塗装
状態が良い場合は、塗装で対応します。
軒天専用の塗料での施工が主流で、一般的な30坪程度の住宅の場合、費用は3万円~5万円前後になります。
交換(張り替え)
劣化が激しい場合は、張り替えを行います。
軒天のサイズや形に合うように建材を加工する必要があり、施工金額は高額になります。建材の種類にもよりますが、18万円~23万円程度が相場です。
交換(カバー工法)
カバー工法とは、既存の軒天を撤去せず、上から新たに建材を被せる工事方法です。
既存の軒天を剥がす手間や廃材の処理費用が必要ないため、張り替えよりも安価に施工が行えます。建材の種類にもよりますが、12万円~17万円程度が相場です。
メンテナンスのタイミング
軒天の主な劣化症状は、汚れや色褪せ、シミ、コケ・藻の発生、剥がれです。
汚れや色褪せのみであれば緊急性は低いですが、塗り替えによるメンテナンスを検討し始める時期と覚えておくといいでしょう。
注意すべきなのは、シミ、コケ・藻の発生、剥がれが確認できる場合です。
シミやコケ・藻の発生は、軒天内部の湿気や通気性の低下などが原因として考えられます。気づかないうちに雨漏りしている可能性もあるので、放置せずに調査・メンテナンスを行うことが大切です。
また、軒天の剥がれは、劣化がかなり進行しているサインと言えるため、早めのメンテナンスが必要となります。剥がれによって生じた隙間から雨水が入り込んだり、虫や小動物が侵入してしまう恐れがあります。
軒天を塗装するときの流れ
軒天を塗装する際の手順は、次の通りです。
1.下地処理
まずはサンドペーパーなどを使って、汚れや古くなった塗膜を除去していきます。また、軽度のひび割れや穴は、パテやシーリング材で埋めて補修し、釘などの金属製の部品を使っている場合は錆止め塗料を塗布します。
注意点として、外壁や屋根塗装では高圧洗浄を行いますが、軒天塗装の場合は基本的に高圧洗浄は行いません。
なぜなら、軒天には通気性を保つために小さな穴や換気口が設けられており、高圧洗浄を行うと穴や換気口から建物内部に水が入り込んでしまうからです。
2.下塗り
下塗りの目的は、上塗り塗料の密着性を高めることです。スパンドレルなど金属製の軒天の場合は、錆止め機能を持つ下塗り塗料を使用します。
下塗り塗装をしっかりと行わないと上塗り塗料が密着せずに、早期の剥がれを引き起こしてしまいます。
3.上塗り
下塗り塗料が乾燥したら、上塗りを行います。上塗りは2回塗りが一般的です。
重ね塗りをすることで、塗りムラのない綺麗な仕上がりになり、塗料の性能を十分に発揮することができます。
軒天に使われる塗料
軒天の塗装で使用される塗料には、「EP」「AEP」「NAD」と呼ばれる3種類のタイプがあります。
EP・AEPの特徴
EPは「エマルションペイント」、AEPは「アクリルエマルションペイント」のことを言います。
シンナーを使わない水性塗料なので安全性が高く、NADに比べて安価なのが特徴です。ただし、水に弱い性質があり、接着力に劣るといったデメリットもあります。
主に、雨風の当たりにくい部分に用いられる塗料です。
NADの特徴
NADとは「アクリル樹脂系非水分散形塗料」のことを指します。
EP・AEPに比べて密着性や耐水性に優れており、ヤニ止め効果もあります。主に塗り替えの際に、使用される塗料です。
色選びのポイント
軒天は日が当たらない部分なので、暗くなりがちです。そのため、塗料を選ぶ際は白などの明るい色がオススメです。
汚れが目立つのが気になるという方は、クリーム色や明るめのベージュがいいでしょう。ただ、やや暗めの印象になってしまう点がデメリットとして挙げられます。
白やクリーム色など以外で塗装したい場合は、外壁と同系色の色を選んで統一感を出すようにすると、建物の全体のバランスも良くなります。
まとめ
軒天のメンテナンス方法は、塗装のほかに張り替え、カバー工法といったものがあります。
汚れや色あせ、塗装の剥がれなどの軽度な劣化であれば塗装で対応できますが、シミや剥がれなどが発生している場合は、張り替えまたはカバー工法を行い、軒天を新しくする必要があります。
軒天の劣化を放っておくと、防火性の低下や雨水の浸入などのトラブルに繋がるため、外壁・屋根塗装と併せて定期的にメンテナンスするようにしましょう。