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シート防水の特徴と作業工程
防水工事にはいくつかの工法があり、その中でもシート防水はマンションやビルの屋上に用いられることが多く、耐用年数と費用のバランスが良い工法と言えます。
このページでは、シート防水のメリット・デメリットや作業の流れなどについて説明いたします。シート防水についてよく知らないという方も多いかと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
シート防水とは
シート防水とは、塩ビシートやゴムシートを貼り付けて防水層を形成する工法です。
広い面瀬でも一気にシートを貼り付けることができるので、マンションやビルの屋上などに適しています。
狭めのベランダでもシート防水はできますが、室外機などによって施工場所の形状が複雑になるとシートの貼り付けが難しくなるため、ベランダやバルコニーなどの場合は、複雑な形状でも施工しやすいウレタン防水やFRP防水を行うのが一般的です。
耐用年数と費用
シート防水の耐用年数は、10~15年程度です。
単価は防水層も含む場合、㎡あたり4,000~7,500円が相場です。
工事期間
200㎡程の屋上を施工する場合の工期は、6~10日程度です。
シート防水で使用するシートの種類
シート防水で使用するシートの種類は「塩ビシート」と「ゴムシート」の2種類あります。
塩ビシート
塩ビシートとは、塩化ビニル樹脂で作られたシートのことで、紫外線や熱に強く、耐久性が高い特徴があります。また、耐摩擦性もあるので軽歩行も可能です。
ゴムシートと比べて耐久性や耐候性に優れているため、シート防水では塩ビシートを使うのが現在の主流です。
ゴムシート
ゴムシートとは、シート状にした合成ゴムのことで、軽量で伸縮性に優れ、紫外線にも強いのが特徴です。
ただ、塩ビシートに比べると厚みが無いため、飛来物や鳥獣の影響などでシートが破れてしまうといった物理的な衝撃に弱いデメリットがあります。
シート防水のメリット・デメリット
シート防水のメリット・デメリットは次の通りです。
メリット
シート防水には、下地を選ばずに施工できるという特徴があります。
なぜならシート防水の場合、既存の防水工法がシート防水以外でも、そのままシートを上から被せることができるためです。
また、広い面積でも短い工期で施工が可能で、さらにシートの厚さも均一でムラのない仕上がりになるといったメリットもあります。
理由として、シート防水は塗膜防水のように手作業で塗っていく方法ではなく、既に完成されたシートを一気に貼り付けて防水層を作り上げていくからです。
デメリット
シート防水のデメリットは、室外機が設置されていたり、凹凸が多いなどの複雑な形状の場所には不向きという点です。
前述の通り、既製品のシートを貼り付けるため、細かい形状に合わせてシートのサイズを調整するのが難しいのが理由です。
もし、シートがうまく貼り付けられずに隙間ができてしまうと、雨水が浸入して雨漏りの原因となる可能性があります。
その他に、下の階や周囲の建物に騒音が響いてしまうことも注意点として挙げられます。
なぜなら、シート防水には2つの工法があり、機械固定工法の場合は固定用金具という部材を取り付ける際にドリルを使用するからです。
シート防水の工法は2種類ある
シート防水の工法は「密着工法」と「機械固定工法」の2種類あります。
密着工法
密着工法とは、専用の接着剤を使って直接シートを下地に貼り付ける工法で、風圧などで飛びにくい特徴があります。
理由は、シートと下地がしっかりと密着して隙間ができない構造になっており、風圧の影響を受けにくい特徴があるからです。
ただ密着工法の場合、下地の劣化が進むと、その上に貼り付けたシートも劣化してしまうため注意が必要です。
なぜなら、直接下地にシートを貼り付ける工法なので、シートが下地の影響をダイレクトに受けてしまうためです。
機械固定工法
機械固定工法は、下地に専用の固定金具を取り付け、さらにその固定金具に熱を加えることでシートと接着させる工法です。
「絶縁工法」「脱気工法」「通気工法」などと呼ばれることもあります。
密着工法と違い、防水層の膨れが発生しにくい特徴があります。
なぜなら、シートと下地の間に隙間ができるので通気性に優れており、防水層の膨れが起こる原因である湿気を逃がすことができるからです。
デメリットは、工事中に騒音が発生する点です。固定金具を設置する際に、大きな音や振動が響いてしまいます。
シート防水 密着工法の作業工程
以下が、密着工法のおおまかな流れです。
1.清掃・下地処理
まずは施工面の汚れやホコリなどを綺麗に除去し、下地が十分に乾燥していることを確認します。
下地表面に凹凸がある場合は、均一になるように樹脂モルタルで調整し、最後に接着力を高めるたに下塗り(プライマー)を全体に塗布します。
2.接着剤を塗布する
専用の接着剤を下地に塗布します。使用する接着剤によっては、下地とシート裏面の両方に接着剤を塗布する場合もあります。
接着剤を塗布した後は、すぐにはシートを貼り付けず、適切な時間乾燥させます。
3.シートの貼り付け・継ぎ目の接着
全体にシートを貼り付けたら、シワやたるみが残らないようにローラーやモップを使って空気を抜いていきます。
シートの継ぎ目は、熱風や溶剤で溶かして接着します。
4.立ち上がり部分にシートを貼る
床面のシートを貼った後は、立ち上がりにも接着剤を塗布してシートを貼り付けます。
立ち上がりとは、床面に対して垂直になっている縁などの部分のことです。
5.シーリング材で隙間を埋める
接着したシートの継ぎ目にさらにシーリング材を充填し、シート同士の隙間を埋めていきます。
6.トップコート塗装
最後に、完成した防水層を紫外線から守るために、表面にトップコートを塗布します。
シート防水 機械固定工法の作業工程
以下が、機械固定工法のおおまかな流れです。
1.清掃・下地処理
機械固定工法は下地の影響を受けにくいですが、水たまりができるほどの凹凸がある場合は施工不良に繋がる可能性もあるため、樹脂モルタルなどで補修しておきます。
2.絶縁用シートを敷く
絶縁用シートを敷きます。絶縁用シートは通気シートとも呼ばれており、下地に溜まった湿気を逃がす役割があります。
3.固定用金具取り付け
絶縁用シートの上に固定用金具を取り付けて、絶縁用シートを固定します。また、固定用金具は上に施工するシートの固定位置にもなります。
4.シートの貼り付け
シワやたるみができないようにシートを敷き、シートの上から前の工程で取り付けた固定用金具に熱を加えて固定します。
シートとシートの間は、溶剤や熱風でシートを溶かして接着していきます。
5.排水口や入隅・出隅に成型役物を設置する
排水口の周りや入隅・出隅は、日常の温度差で生じるシートの伸縮によって破損しやすいため、成型役物と呼ばれる部材をを設置して補強します。
入隅は二つの壁が内側に向きあっている箇所を指し、出隅は外側に向いた角の部分のことです。
6.シーリング材で隙間を埋める
シートの継ぎ目に隙間ができないようにシーリング材で埋めていきます。
7.トップコート塗装
最後に、表面にトップコートを塗布して、紫外線から防水層を保護します。
まとめ
シート防水は、手作業で塗装するウレタン防水やFRP防水等と違い、既製品のシートを貼り付けて防水層を作るので、広い面積を短時間で施工できるメリットがあります。
また、既存の防水がシート防水ではない場合でも施工することが可能です。
ただし、形状が複雑で凹凸が多い場所では、シートを貼る際に隙間ができてしまい施工不良に発展する恐れがあります。
そのため、戸建てのベランダや屋上に貯水槽がある場合などは、その他の工法で施工するのが無難です。
シート防水は高い技術力が必要になる工法なので、業者を選ぶ際にホームページで施工実績を見て置いたり、わからない点にハッキリと答えてくれるかなども確認しておくといいでしょう。